近くのコンビニでネット通販が始まったので、赤ワインをたのんでみた。一本、1080円。受け取り店の指定を最寄の店に指定し、数日たって「明日、入荷します」のメールが来た。次の日、振込み票を持って買いにいくと、ネット商品を取りにくるお客は、その店にとっては始めてのことだったのか、ややしばらく待たされた。どう対応したらいいのか、まだ末端の店まで対応方法が降りてきていない感じで、店長さんらしき人や店員さん達を右往左往させてしまった。なんか申し訳なかった。
やっと商品を見つけてくれた。
自分は野菜の仕分けをしている最中に商品を取りに行ったので、作業服だった。いわゆる作業労働者と赤ワインと、そしてネット。お店の人達には、この3つの点が線で容易に結びつかなかったのかもしれない、なので混乱を与えてしまったのかもしれない。店長らしき中年の男の人が、眼がねを鼻筋の途中あたり遠近両用状態で、なで肩の形をしてる謎の物体を凝視しながら、やっと持ってきてくれた。わけのわからないフランス語というか呪文のようなカタカナが書かれた謎の梱包物、なんじゃこりゃと思われたのかもしれない、そんな梱包物をちょい持ち上げ、
「あのー これでしょうか?」
自分は間髪入れず、
「これです(笑)」
味はまぁまぁだった。
その晩、娘とひさびさに卓球に行った。少しうまくなっていた。スマッシュをクロスに打つと見せかけて、逆クロスに打ち込むのが、うまくなっていた。お父さんはそれを一本もレシーブできなかった。あと、つなぎのドライブも少し安定してきた。バックハンドサーブのレパートリーが一つ増えていた。スマッシュ確率が高まっていた。あと、卓球マナーも少し向上していたみたいだ、誰かに、注意されたのか(笑)? 総じて、少し腕を上げていたみたいだ。娘の方から、
「対戦しよ!」
「OK!]
最大5ゲーム3ゲーム先取、いわゆる5セットマッチを3回やった。お父さんが勝ったら腰もみ10分づつ。娘が勝ったら中古のマンガの本を1冊づつおごらればならない。3度お父さんが勝ったら、腰もみは30分にもなる。全部負けたら本を3冊買わせられる。
両方、ハンデなしの一回目、3-0で娘の勝ち。2回目はお父さんがごろついて、ハンデ2点を貰ってスタート、
結果は3-0で娘の勝ち。
3回目、お父さんは娘を脅してすかして、おだてて、誉めて、ごろついて、あばれて、ひがんだ事を散々言ったりして、ハンデ8を娘からうばった。
結果は3-2でお父さんが勝った。アハ、ざまーみろ。
でもハンデ8というのは、確か小学校3年生の時、娘と卓球で対戦したときの、お父さん側のハンデキャップの数だった。あれから何年になるだろう。ハンデキャップが逆転するとは、自分は夢にも思っていなかった。
ハンデ8でもお父さんが勝った、お父さんの意地だった。勝った瞬間、自分は奇声を発してしまった。
「うう うおあぁあああ!」
娘はアメリカ人のように、大げさにあきれていた。
親の心、子知らず。
だとは思ったが、自分の場合、親の心は子供の足を引っ張る粘着物でしかないと思っている。親の心など、100害あって一利なしである。
心は墓場に持って行こうと決めている。