この町の雪もかなり解けてきた。
「そのうち解けるんだからぁ」などと、氷割をする人を冷やかすタイプの人と、冷やかされて「エヘヘ」と恥ずかしそうにし、でも割らないと気がすまない、そんな人のタイプを2極に分割してしまう季節である。
自分は後者である。
あったかくなってきたので自転車修理の仕事がポツラポツラ入ってくるようになった。八百屋が出張修理をしている、おもしろいめずらしいとのことで、この町のローカル雑誌「月間○○」さんの取材を受けた。その月の修理特集に乗せていただいた。また、スマホの普及に伴い、自分なりに勉強して作った素人ホームページが功を奏したらしく、そちらからの方が電話がかかってくる。ホームページのタイトルは「八百屋さんは自転車パンク修理屋さん」にした。「どこで買った自転車でも差別なく修理させてもらいます。」「なるべく安い修理計画を立てますので、気軽に声をかけてください!」というテイストのホムペにしたため、「ウチで買った自転車でなければパンク修理はしない」と、いういまだ閉鎖的なこの町の業界の背景も追い風みたいになり、ホムぺを作って三年目くらいから、以来の電話が毎日数件くるようになった、
いろんな自転車修理をさせてもらって思うのだが、まず、みなさん、タイヤの空気が足りない。
ほとんどの人が空気不足で自転車に乗っているといっていい。そのために起きるトラブル(パンク)が圧倒的に多い。空気圧さえ面倒みていればほとんど修理に出費する必要がないのではないかと思うのだが、、、
パンクの原因の6割が空気不足によるといわれている。
歩道から車道へ急に降りる時などの段差によって、アスファルトと自転車のリムにチューブがはさまれ穴があきパンクするケースが一番多いと言われている。空気がちゃんと入ってさえいればこのトラブルは無い。
昔はタイヤの出来が悪かったため、空気を入れ過ぎると、チューブが飛び出してきたり、バーストしたり、硬くて腰が痛くなったりなどの迷信ともいえるような事情があったため、昔の自転車屋さんはいまだに、少し軟らかめに空気を入れた方がなどと言う人もいるらしいが、今となってそれは事実ではない。今では自転車を飛行機でも乗せてよっぽど高度の高い気圧の低い場所に持っていかない限り自然バーストはしないし、タイヤもよくなっているので、かなり劣化して亀裂でも入らない限りチューブは飛び出してこないし、今時のタイヤは空気を入れすぎてもゴムみたいに硬くならないし、サドルにもサスペンション機能がついている。
今のタイヤというのはある意味、硬くすればするほど、路面に対する密着面積がすくなくなるので、早く快適に走れるようになる。鋭利な石ころを踏んづけてしまってタイヤが硬いこことによりパンクするというケースは全体の数パーセントに過ぎない。我々が子供の頃はジャリ道が多かったが、今、市街地はほとんどオンロード状態(舗装道路)なので、最適空気圧(ちょっと固め)に入れて走行したほうが、いいことだらけなのである。百利あって一害なしなのである。
ではどうやってどれくらい入れればいいのか?
なので自分はゲージ付き空気ポンプを買うことを勧めているのである。
昔はゲージ付きポンプなど手の届かない程高価な物だったが、ホームセンターで今2000円代で買える代物になってきたので、ぜひ一家に一台あって欲しいアイテムなのであります。
例えば家族4人のお父さんお母さん小学生の息子、娘の家族構成の場合、お母さんのママチャリ(26インチサイズ)の最適空気圧は300KPA(キロパスカル)、息子が乗るマウンテンバイクは420KPA(キロパスカル)、娘の乗る子供用自転車(24インチサイズ)は350KPA(キロパスカル)、んで、お父さんが通勤のため、あるいはダイエットのためクロスバイク(あるいはロード用サイクル)を所有しているとしたらそれは600KPA(キロパスカル)。
家に4台も自転車があるとする。めずらしいケースではないと思う。
この場合、4台とも最適空気圧が違うのである。本来自転車にあわせて空気を入れてやらなければならない。ゲージ付きのポンプがなければ絶対に無理なのであります。
そこでゲージ付きのポンプを買ったとする。
いくら空気を入れたらいいのか?
タイヤに書いてあります。
今のタイヤには必ずと言っていいほどきちんと空気をいくらいれたらいいかが表記されております。おるのですが、残念、しかし、なのであります。自転車の空気圧を表現する方法がなんと4種類もあるのでありあす。いいかげんにしろ!と言いたくなるほど何種類も単位の考え方が違うのでります。統一されていないのあります。それが自転車の空気圧に対する考え方をわかりずらくしていて、大勢の人間が致し方なく空気不足に甘んじなければならない現状を引きおこしているのだとも思います。
なんとか空気圧の理解を深めていただくべく説明を試みてみたいと思います。
タイヤに書いてある最適空気圧の表現はこんな感じです。
1. PSI(ピーエスアイ)
2. BAR(バール)
3. KPA(キロパスカル)
4 KG/CM2(キログラムフォーススクエア平方センチメートル 一般的には単に、気圧と呼ぶ)
必ずこのどれかの表記がされています。
1,のPSI(ピーエスアイ)は英国表記で分子がポンドで分母が平方インチです。一平方インチの空間に何ポンドの力が加わっているかを表す単位です。
2.のBAR(バール)は昔、天気予報で気圧を表す単位でした。ナントカミリバールとかいいましたよね。
3.のKPA(キロパスカル)、現在の天気予報などで(ヘクトパスカル)おなじみの単位です。(気圧の考え方を最初に発見したパスカルさんにちなんでそう呼ばれております)
4. KG/CM2(キログラムフォーススクエア平方センチメートル 一般的には単に 気圧と呼ぶ)は分子がキログラムで分母が一平方センチメートル)一平方センチメートルの空間に対して何キログラムの力が加わった状態を表す単位。米国、フランス、日本で使われている。
このどれかの表現がタイヤに刻印されているわけであります。
ここまで分かりずらいわけですから、ほんとにバカヤローと言いたいですよね。全くです。しかしひるまないで先に進みます。
ママチャリの例でいきます。
タイヤにこう書いてあるとします。よく書いてある例です。
「52PSI/350KPA]
これは、ゲージがPSIなら52の目盛りまで空気を入れてください。
またはゲージがKPAなら350の目盛りまで入れてください、ということを我々に伝えようとしてます。
ここでコツです。
PSIというイギリスの単位は我々日本人には全く水に合わない単位なので無視するのです。見ないようにします。そしてその他の3つの単位だけに注目するようにします。
350KPAは イコール 3.5(BAR) イコール 3.5KG/CM2 なのです。350キロパスカルはなんと3.5バールと同じではたまた3.5気圧と同じだと言うことなのであります。
ちなみに 300KPAは イコール 3.0(BAR) イコール 3.0KG/CM2 と同じなのです。(厳密に言うと若干違うのですが、自転車の空気圧の場合は同じと考えてOKであります)
賢明な方はお気づきのことと思いますが、つまりPSI以外の単位は桁違いはあれど、数字が同じだということなのであります。ですからお手持ちの空気ポンプのゲージの単位が
KG/CM2、だとして 上記のママチャリの例の「52PSI/350KPA]のタイヤだとしたら、52PSIは見ないようにし、350KPAに着目し、350KPA は 3.5KG/CM2 と同じでありますから、ポンプを3.5の目盛りになるまで漕げばいいということになるのであります。
上の左側の写真はうちのゲージ付きポンプのゲージの部分の写真なんですが、おわかりになるでしょうか、外側の目盛りはPSIを表し内側はBARを表しています。写真のゲージの例であれば外側のPSIの目盛りは見ないようにして、内側の目盛りが3.5になるまでポンプを動かせばいい訳なのであります。また、上の写真の右側のゲージは単位がKPAです。もしタイヤに刻印されている数字が350KPAならば350まで、3.0KG/CM2とかだと300まで、3.5(BAR)の刻印だと350のメモリまでポンプを漕げばいいことになります。
他にいろんなタイプのゲージポンプが出回ってます。外側がPSIで内側がKG/CM2だとかです。しかし上記の理屈が分かっていればどんなゲージにでも対応できるようになってしまう訳なのであります。ぜひ覚えておいて欲しいミニ知識なのであります。
ん?何?タイヤに 「52PSI」 だけしか書いてなかったらどうすればいいか?って?
心配ありません。
日本で出回っているタイヤは必ず英国表記以外の表記がどこかにされていますのでそれを探してください。必ずどっかにPSI以外の表現が刻印されています。
後よくある表記は
クロスバイクやスポーツタイプの自転車の表記ですが、
5.2BAR – 7.2BAR( 5,2 – 7.2 KG/CM2 )
こんな表記もよく見ます。
これはどう考えればいいかと言うと、「最低でも 5.2気圧の空気を入れて欲しい、んで 7.2気圧以上にならないようにしてね」と、伝えてくれています。普段買い物に行くくらいなら 5.2 でOKだけれども、サイクリングやツーリングなどの遠出をするときは、7.2 くらいの高圧にした方が楽に走れますよ! と、いうことを伝えようとしているんであります。
どうでしょうかか?説明がうまいこと伝わったでありましょうか。自転車の空気は乗らなくても半年で2割減ると言われています。毎月チェックしなくても、2ヶ月に一遍はチェックして欲しいところであります。車も2ヶ月くらいしたら結構減ってますよね、車と同じなのであります。
もしゲージ付きのポンプまで買いたくないという方はですね、一度ゲージポンプで最適空気圧にしてもらって、そのタイヤの硬さを指に覚えさせてですね、んで、次回から、それより軟らかくならないような感覚で空気入れを使用していただければいのではないかと思うのでります。
余談ですが、
最近パンクしずらいタイヤというものが売り出されてますが、ここは注意が必要です。タイヤの円周外側に固いゴムがはられているため、確かにちょっとした鋭利な物を踏んずけてもパンクしずらいのだと思うのですが、しかし、これにより、昔は片手の親指の爪をタイヤに突き刺すように当てただけで空気の状態を確認することが出来たのですが、パンクしずらいタイヤは固いため、昔の感覚で爪を立てて確認すると、空気が入っていると勘違いして、でも実は全然入ってなくて、その結果、空気不足によるパンクに見舞われるケースが多いのであります。自分の最近の実感ですが、パンク修理の3割くらいはこの原因によるパンクにです。つまり、パンクしずらいタイヤはパンクしやすいのであります。このパンクしずらいタイヤというものが売りに出されるようになってから、私のこの商売が忙しくなったと言っても過言ではありません。
じゃあ、どうすればいいか、この記事を最後の方まで読んでくれたと思われるあなた、そんな人限定でパンクしないコツをお教えします。パンクしずらいタイヤはパンクしやすいので、じゃあどうしたらいいか。
こんな感じで空気の状態の確認をして下さい。パンクしずらいタイヤは片手ではなく、両手の親指の爪をタイヤの一か所に集中して思い切り力を込めて押し込んでください。それで空気の状態がわかります。逆に言うと、それくらいやらなければパンクしずらいタイヤというのは空気の状態が分かりません。
PS
自転車で散歩することを、我々チャリンコ好きは、「時速15Kの風景」と、呼んでいます。歩きの風景もよし、車での車窓風景もよしですが、この自転車での「時速15Kの風景」をぜひ人生のいちページに加えてってみてはいかがでしょうか。日頃それを満喫できるよう、チャリンコメンテナンスを怠らず、どうか空気のチェックだけでもやってみてはいかがでしょう。
以上で説明を終わります。
今おすすめのゲージ付きポンプです。仏、英、米、のバルブに対応していて、ぜひ一家に一台、おすすめです。