誇り

3.小学生の頃

どれだけ傷ついたら、良い大人になれるのだろう。

どれだけ歯をくいしばったら、うたれ強くなれるのだろう。

どれだけうそをつかれたら、自立しようとする人間になれるのだろう。

どれだけくやしい思いをしたら、がんばりのきく人間になれるのだろう。

どれだけ人にだまされたら、人間好きになってくれるのだろう。

どれだけ人にぺこぺこあやまれば、まわりが君を認めてくれるのだろう。

どれだけ泣いたら、福々しさに包まれるのだろう。

どれだけひどい事を言われたら、笑顔に哀愁が漂うようになるのだろう。

どれだけいじめられたら、やさしさがにじみでてくるのだろう。

どれだけ不幸を味わえば、幸福の追求を始めてくれるのだろう。

どれだけ理不尽な思いを味わえば、愛情深くなれるのだろう。

どれだけ人に怒られたら、人間くさくなってくれるのだろう。

この世で、一人前になろうとすればする程、君はボロボロになっていく。

大人になろうと もがけばもがく程 君はどんどん きたなくなっていく。

でもボロボロできたない将来の君を見て お父さんはほくそえむだろう。

きたなくて汚れた君は君が生きた証であり 実はお父さんの誇りでもある。

君の汚れはお父さんにとっての誇りなのだ。

そして 君がさらに年を重ねた時、自分を汚した人間に感謝できるようにもなる。

自分をひどい目に合わせた人間がいとおしく思える時が必ず来る。

そんな時、お父さんの今生での君に対する役割が完結する。

自分に愛情を注いでくれる人間はもとより、そうでない人間達に、実は生かされている、そんなことをいつか君は知るだろう。

そんな時、お父さんは親としての荷を降ろすことになる。

今度は君が親になる番だ。

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