置いてきぼり

4.中学生の頃

 子供が大人になり自分の人生を優先させる時、いつか親をバッサリ切り捨てなければならない時がやってくる。その時感傷に流されずへっちゃらでいられる強い気持ちを子供の心にこしらえてやることが我々親のつとめではないだろうかとそう思う。また捨てられる側の親は親でその時平気でいられる面(つら)の皮の厚さを日頃から鍛錬しておかなければならない。愛情が深ければそのハードルは高くなり並大抵ではなくなる。でも愛情が人を強くするのではない。愛情ゆえ人は強さをせかされるのである。子供の成長に合わせてなんとか強さを間に合わせなければ置いてきぼりをくらう。置いてきぼりをくらわない唯一の方法、それは強くなることでしかない。だから親はいつも焦ってばかりいる動物なのだろう。そんでもっていつかとうとう親は置いていかれる。遠ざかっていく子供の後ろ姿をながめながらのそうなった時、さびしさという人間の神経構造の弱さとどう闘うかが恐怖の的であったように思っていた。思っていたがしかし、今はそう思わなくなった。一人になった時、そこには百花繚乱のお思い出が自分を包んでくれる。そんな世界がある。そんな世界に向かって動きだしているように思うのである。

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